次のブランド革!目の肥えた革職人が使いたがるイタリア革とは?

次のブランド革!目の肥えた革職人が使いたがるイタリア革とは?

ジワジワきている…そんな予感が漂う。海外で話題になっている商品が日本に上陸。
大物感漂う完成された雰囲気。その流れに気付き出している革職人も多い、何を言っているのかというとそれが今回紹介するイタリア・トスカーナ地方の老舗タンナー、テンペスティ社で製造された「エルバマット」です。

目の肥えた革職人を唸らせる話題のイタリア革は、革職人にとってうれしい条件が整っています。革職人は私を含めて革を購入する側の人間とは違った側面から革を見ています。それは

扱いやすく作りやすい革であるか。売れるインパクトを持っているか。

それについては以下に詳細を記していますが、もうひとつ忘れてはいけないのが革の卸値です。いくら良い革だとしても卸値が高すぎると商品として売り出したときに高くなりすぎてしまう。手の届きにくい商品になってしまうということがあります。

良い革を使って技術を詰め込んで良い商品を作りたい。でも現実的にお客様が購入できる金額に抑えないといけないので、どの革職人も扱っている革が似てきたりします。

このエルバマットも現在は知る人ぞ知る革ですが、初めて目にして触れたとき、ほとんどの革職人が心を奪われてしまう、それほどの革であるといえます。革職人が惚れてしまう革はもちろん私たち使用する側にも魅力的に映るのは間違いなさそうです。

日本でイタリア革の代表格といえばブッテーロとミネルバリスシオですが、革の質に置いては勝るとも劣らないポテンシャル。後は日本での知名度がまだ低いというだけ。生産量などの心配もあるが5年以内にはエルバマットがイタリア革の代表格になっていてもおかしくない、それほどに多くの革職人が惚れる革です。

「話題のイタリア革エルバマット」売れ筋ランキング

伝統のなめし製法で作られた最高級ヌメ革

植物なめしの生誕地と言われるイタリア・トスカーナ地方でも、数多くのタンナーが集まるサンタクローチェ地区にあるテンペスティ社で製造された「ELBAMATT(エルバマット)」。

各タンナーは仕入れる原皮は同じであれ、それぞれのなめし方法を持っていて、その技術を競い合っています。素材自体は同じである石油が、それぞれの石油製造会社の精選方法によって異なる優れた商品を生み出しているのと似ています。

テンペスティ社の製法は、バケッタ製法と呼ばれるイタリア伝統のなめし製法で、なめす段階で入れる牛脂と魚脂の配合が他社と異なり特許を取得しています。その名もエルバマットと呼ばれる独自の製法です。

また、環境保護に配慮し、家具や紙を製造する為の木材の余剰物から抽出した、100%植物由来の原材料のみをなめし剤に使用。動物の皮を革に変えていく第一段階のなめし(タンニング)という工程は防腐効果と原皮をやわらかくするのが目的で各タンナーの腕が問われる最も大事な工程です。

天然素材だけだと漬け込ませるのにあまりに多くの時間が掛かるため、現在ではクロームと呼ばれる薬品を使ったなめし方法が主流の中、環境保護にも配慮した植物性素材だけでこれだけのハリと手触りの良さを生み出すとは驚きです。

このなめしの良し悪しによって次の工程で染料を入れる時、どれだけ革に染料が浸透しているかが変わってきます。つまりなめしの工程で革の内部の繊維が壊されていると染料が入りにくく色の出方も違ってきます。革の生産業者の間でよく語られることは「革の良し悪しは裏側を見よ」。良い革ほど裏側にまでびっしりと染料が浸透しているものです。

通常の2倍のオイルを浸透させたオイルレザー

先程の染料の浸透度は次の工程であるオイル漬けにも通じます。使っているうちにキズが付いてしまうことは仕方のないことではありますが、染料が浸透している革だと見事にそれを補ってくれます。表面にだけ色を付けている革だとキズがついた場合、白っぽくキズが残ってしまいます。ところが革の繊維にしっかりと染料が浸透しオイルを浸み込ませている場合は、キズの部分を軽くもむと内部の染料とオイルが溶け出し、キズをカバーしてくれます。深いキズなら完璧には戻らなくとも目立ちにくい程度に、細かなキズならわからないほどになっていきます。それこそが自然素材で作られたものの良さではないでしょうか。

エルバマットに関しては、このオイル漬けの段階で入れる牛脂と魚脂の配合で特許を取得しています。革を仕上げていく工程で染料を入れた後に、より色を際立たせる(テカらせる)ためにオイルと呼ばれる脂やロウ(ろうそくの原料)を用いたりします。脂を使っているものをオイルレザー。ロウを使用しているものをロウ引きレザーといいます。ロウ引きレザーは白いロウを塗りこんでいるので最初の状態では革の表面が白く曇ったような色ですが、使い込んでいくうちにロウが溶け出し艶感が覆っていきます。

オイルレザーに関しても、なめしや染料加工の技術の差によってオイルを入れた時の艶感は違ってきます。各タンナーはオイルのブレンドを工夫し知恵を絞って、より良い艶感を出そうと努力を重ねます。これがタンナーごとに個性を生み出し違いをもたらします。

牛脂と魚脂の独自の配合で特許を取得し、通常の2倍のオイルを浸透させたエルバマットは数あるオイルレザーの中でも際立ったポテンシャルを持った革であることは間違いありません。

イタリア革ならではの発色の美しさ

エルバマットのカラーリングはオイルの多さがもたらす強く深いイメージがします。
車の色のバリエーションのように革でも売り出す色のカラーによって商品のイメージが定まってきます。

同じイタリア革のワルピエ社が作るブッテーロは世界的に有名ですが、ブッテーロよりオイルを多く用いた革があります。マレンマというオイルプルアップレザーですが、それはオイルの多さから重厚な深みが感じられる色です。

エルバマットも通常の2倍のオイルを含んでいるため、重厚な深みが感じられます。
深みというのは渋みのある色とも感じられますので、イタリア革らしいパンチの利いた、それでいて日本人の好みにも合う落ち着いたカラーリングに仕上がっています。

流通している革の数も多く、人気色であるブラウン系やブルー系では濃淡の細かな違いが感じられるカラーリングの多さが憎いところでもあります。個人差はあってもまず間違いなくお気に入りの一色が見つけられるでしょう。

使うほどに色艶が増すエイジング

100%天然成分でなめされたタンニンレザー(ヌメ革)は使い始めの時は、よちよち歩きの段階で使うほどに色艶が増し、成熟していくということは革好きの間では有名な話です。

エルバマットも例外ではなく、見事なまでに美しい艶感と深みのある色合いに経年変化していきます。エイジングは時間と手間をかけて作られた天然成分でなめされた上質なタンニンレザー(ヌメ革)にのみもたらされる革の最大の楽しみで、すべての革製品に訪れるものではありません。これこそが高い値段で買った対価ともいえるもので、時を経ても輝きを増す革製品の魅力を味わっていただきたいと思います。

一枚の革でほぼすべて使い切ることができる

革は元は生き物の皮なのでキズやムラ、血管のあとや虫さされも残った状態で革職人の手元に届きます。もちろん一頭一頭違うので個体差が生じます。革製品を作る際にそういった悪い部分は出来るだけ避けて裁断しますが、状態の悪いものではほとんど綺麗な箇所がないくらいのものもあります。天然素材を販売しそれを理解して購入しているわけですので返品はこの先の取引上できません。

これが革職人にとって頭の痛い問題であって革のロスが多いということです。
これにもエルバマットは優れていて、使用している部位が綺麗で張りの有る場所なので、一枚の革ほぼすべて使えるというメリットがあります。これはすべての革職人にとってありがたい点で注目の革というのがわかります。

牛革の中でもっとも繊維の詰まった部位であるベンズと呼ばれる背中からお尻の部分の中央部分のみを使用しているので革のコシが違い、シングルバットで長方形に近い形でトリミングされているのでロスが少なくなるというのもうれしい点です。

革職人軍団が放つエルバマット新ライン

一番良いと思う革を使いたい。今まで余りあるほどの革を見続けてきた革職人が最高と認めたエルバマット。

革職人の間で評判になりつつある革をいち早く取り入れたのが、前衛的ブランド・札幌の革職人集団「steal」らしいといえるでしょう。かねてよりブランドポリシーとして「心を奪う革製品」としてきただけに、自分たちが培った技術それを実現できる革といえそうです。

最高の革と手縫い仕上げの革職人の技を詰め込んだ自分たちだけの世界を作り上げたい。本気の「steal」。本シリーズは存分に感じられそうです。