革職人が総手縫い!芸術品の域の革製品をもっと知って欲しい

芸術品の域!革職人が総手縫いする革製品

革製品には手縫いとミシン縫いがあって、ミシンはもちろん効率化を図って作られた機械です。皆さんも一度は裁縫をされたことがあると思いますが、ミシンは意外と難しい。

私は服飾の専門学校に通っていましたが、男子のほとんどはそれまで裁縫というものをしたことがなく、初めてミシンというものに触れます。するとどうなるか… もちろんまっすぐさえ縫えませんし、糸調節なんて未知との遭遇です。

そのミシンの中でも究極に難しいといわれるのが革のミシン縫い。理由は主に二つで革素材そのものが硬くて縫いにくい。そして失敗すれば革に穴が開くので、布生地のようにほどいて同じ箇所を縫って手直しすることが出来ないという点です。

特に袋物といわれるバッグは縫う箇所も多く、湾曲しているデザインも多いので難しさの極みです。ポケットや持ち手などのディテールさえ何年も掛かってようやく習得できるレベルです。

ミシンは機械といえど使うのは人間。スイッチひとつで出来上がる機械ではないのです。効率化を図ろうとしても使いこなせる人を育成するまで、相当な期間が必要なようですね。

手縫いの革製品は革職人にとって至難の業

ミシンは機械をうまく使いこなせるかの戦いで、手縫いはその逆で針と糸だけを使い自らの感覚で戦いを挑んでいく職人の世界です。

ミシンが世に出回るまではすべての人が手縫いで裁縫をしていました。ご存知のとおり人のすることですから旨い下手、得手不得手があります。手縫いが出来る人は、器用で同じことを繰りかえし出来るコツコツ出来る人だと思います。これが良い職人の条件で毎日毎日同じ作品を作っていても日々勉強で一日一日違うらしいです。

手縫いはミシンとは違い、革に菱目打ちやヨーロッパ目打ち、菱切りといわれるホークやキリのような形のもので予め穴を開けてから、その箇所を縫っていきます。この目打ちの形によって出来上がりのステッチの形も違ってきます。

革職人とっての大事な道具がこの穴を開けるもので初心者用からプロ用、そして最高に難易度が高いものもあります。穴の大きさとピッチと呼ばれる縫い幅によってステッチの美しさと革職人の腕がわかります。

ピッチの幅に込めた革製品のイメージ

手縫いの場合はピッチと呼ばれる縫い幅によって作る革製品のイメージが変わってきます。
ピッチの幅が4mmを超えるとややカジュアルな印象に。3mm以内だと魅せるステッチ。ステッチに重きを置いているのがわかります。

ピッチの幅が大きいのがよくないと言っているのではなく、商品のイメージやデザインなどにも合わせてピッチ幅は決められます。バイカー系やアメカジ要素の強い革製品はピッチ幅が広いのが特長です。ワイルドに男っぽく見えるからでしょう。

3mm以内の魅せるステッチだと縫うのも多くなりもちろん大変な作業です。
私は手縫いの場合、3mmが一番綺麗に手縫いを感じられる美しいステッチだと思っていますが、それはもちろん人それぞれの好みです。

Luteceの革職人:高橋秀行氏は現在1mmピッチの二つ折り財布にチャレンジしています。
ピッチが細くなればいがんだり綺麗に見えないところが出てきて、部分ごとの最初から最後まで縫うだけでも気が遠くなる作業です。

この1mmピッチの手縫いはエルメスの職人も今でも行っているクウジュセリエと呼ばれる技術の高い職人だけがなせる業です。もちろん完成すれば美しい細かいステッチが行儀よく並んでいて、正に芸術品の域です。ステッチのほつれも少ないことから技術的にもすばらしいものです。完成が本当に楽しみです。

革職人総手縫いはやっぱり価値があるものです

このようにミシン縫いには機械に順応する難しさ。手縫いには自らの感覚で技を磨いていく難しさがあります。

手縫いは一箇所がほつれても、それ以上はほつれず、その部分を縫い直せば修理も可能ですので丈夫で長く愛用するには技のある革職人による手縫いが最高級品だと思います。一生ものとはならずとも十年持つ財布として高級財布を持つ意味はありそうですね。