ひとことで「革」といっても色々あります。
- 皮と革の違い、なめしって何?
- 革製品って色々あるけどどこで違いがわかる?
- すべての革がエイジング(経年変化)が楽しむことができるのか?
その特徴、使われる用途を知ることにより、革製品を選ぶひとつのバロメーターになればと思います。
目次
皮と革の違いって?
一般に、なめし加工をほどこしてない皮のことを『皮』、なめした皮のことを『革』と区別しています。
「皮」とは?
一般的に、動物の体を覆っている皮。
動物の皮をはいでなにも加工していない皮(生皮)を『皮』と言います。
「革」とは?
動物からはいだ生皮は、そのまま放置すると腐ったり乾くと固くなったりします。生皮をいつまでも腐らないように、しなやかさを失わないように皮を加工します。
この加工を[なめし]と言います。
そして、生皮をなめした物を『革』と言います。
なめしの方法
「なめし」は、皮革製品の原材料である動物の「皮」に防腐処理を施し、「革」へと生まれ変わらせる重要な工程です。
なめしの方法は大きく分けて下記の3つの方法が主流です。
- 革の王様「植物タンニンなめし」
- 私たちの生活に欠かせない「クロームなめし」
- 双方の良いと事をとった「混合(コンビ)なめし」
それぞれの工程の違い、その特徴、使われる用途を知ることにより、革製品を選ぶひとつのバロメーターになればと思います。
植物タンニンなめし 生産数は希少。“革の王様”
植物の樹皮、根、葉などから抽出した植物タンニンを溶液でとかした槽に、吊り下げた状態の皮を浸してなめす方法。代表的な革としては、ヌメ革などがあります。
数ある革の中でも最も革らしい雰囲気を持つため、“革の中の革”とも呼ばれます。
ひと目で本革と分かるナチュラルな風合い、高い上質感と風格、素朴な匂いやなめらかな手触りが特徴。
またヌメ革は、廃棄されても土中で微生物などにより自然に分解され、またその製造工程中に環境を汚染するような有害廃棄物をほとんど出さないため、自然環境に優しい素材として近年その価値が見直されています。
ヌメ革は繊維がキュッと締まっているので、たいへん頑丈な革です。分厚くて重たい仕上がりのためコバ(革の断面)が整うのでコバ磨きの手法ができるのです。
その特性から財布や革小物などに使われることが多く使い込んでゆくと徐々に繊維がほぐれてやわらかくなり、味わい深く手に馴染んできます。
手入れをしていくと使っていくと長く愛用することができるので革を持つ喜びを堪能させてくれます。
コバ(革の断面)が整うのでコバ磨きの手法が可能となります。市販されているものでもタンニンレザーは特性を生かしたコバ磨きの断面が多く、コバ磨きの美しさによって作っている革職人とこだわりを垣間見ることができる部分でもあります。
クロームなめしと違って染料以外に何も加工されていない革が多く、革の表面にその動物が持っていた元々の傷やシワ血管の跡などが出ることが多く、一枚の革でも綺麗な部分が少ないといったデメリットがあります。
このように数多くの手仕事を経て、時間をかけて革本来の表情を引き出していくため生産数は希少。革の取引価格も高価なものになります。
- 革の経年変化が楽しめる。長く愛用できる
- 分厚くて重たい
- コバ(革の断面)が整うのでコバ磨きの手法が可能となる。
- 財布や革小物などに使われることが多い
- 何も加工されていないため一枚の革でも綺麗な部分が少ない
クロームなめし 革製品の中で95%以上で生活に欠かせないもの
塩基性硫酸クロムを用いてなめします。
柔軟性、弾力性、拡張性、耐熱性、染色性に優れ、軽い仕上がりになっています。
タンニン剤より安い薬品を使用しているので、急速に普及して現在では市場に流通している大半がクロームレザーです。
ドラム製法で短時間に安くて大量になめすことができるので、日本でも戦後の高度経済成長期に数多くのタンナーさんがクロームなめしに切り替えたと言われています。
工程はドラム製法で化学薬品を使い革をやわらかくし染料で色を調節し、革を乾燥させてあとに化粧加工と呼ばれる革の表面を吹き付け塗装していきます。
このときにニスなどの量で光り具合も調節していきます。革の表面にシボが入った型押し加工などもでき加工を施しているために革の表面が綺麗で一枚の革のほぼすべてを使用することが可能なので経済的でもあります。
用途も多彩で多いのは靴やバッグ、ソファなどのインテリア、車のシートやハンドル、バレーボールなどのスポーツのボール、革ジャンなどの服飾製品など今では生活に欠かせないものとなっています。
現在では、革製品の中で95%以上がクロームなめしベースの革が使用されています。
- 革の経年変化が控えめ
- 薄くて軽い
- 耐熱性も高い
- コバ(革の断面)が整わないのでコバ磨きの手法ではなく、ヘリ返し手法を小物では採用する
- 加工を施しているために革の表面が綺麗で一枚の革のほぼすべてを使用することが可能
混合なめし(コンビ)
クロムなめし、タンニンなめし、両者の特徴を併せ持つ。コンビネーションなめしと混合なめしと呼ばれるなめし方法です。クロームの良いところとタンニンの良いところを取り入れようとした手法ですのでタンニンに比べゆっくりと時間をかけた経年変化が期待できます。
同じエイジングレザーでタンニンレザーとの大きな違いはタンニンレザーは使い始めは繊維がキュッと締まっているので、まだ固く使い込んでゆくと徐々に繊維がほぐれて、やわらかくなりますが、混合なめし(コンビ)は最初からやわらく使いやすく感じるのが特徴です。
その当たりが、クロムなめしとタンニンなめしの両方のいいところを合わせて作られているということでしょうか。 もちろん長く使ってもその風合いは変わりません。
代表的な革にグローブレザー(野球のグローブ)などがあります。経年変化もあるブーツやソファ、財布や革小物などに使用されることも多いようです。
- 革の経年変化が控えめで時間もかかる
- 薄くて軽い
- 耐熱性も高い
- 革によるがコバ磨き、ヘリ返し手法も両方可能
【起毛している革の魅力とは】
スエード
スエードは元は「スウェーデン」の意味、スウェーデン手袋という言葉からのちにその製法を意味するよう呼び名に。
主にクロムなめしを施した革の内側をサンドペーパーで擦って毛羽立たせた革を、スエードと呼びます。
主に牛革、ゴートスキン、シープスキンなどが使用されます。スエードは革の裏面を起毛させたもので、独特の光沢感があります。見た目よりも丈夫なので、耐久性が求められる靴に
よく使用されます。
ただし、水濡れに弱いのが欠点で、水に濡れた部分がシミになってしまう場合があります。
毛足の短いものほど高級品として重宝されます。
スエードは強度がありカラフルなものも多いので靴以外にもジャケット、手袋以外にも革小物などによく用いられます。
メンズ、レディース問わず人気があるのが特徴です。
ベロア
成牛革の裏面を起毛したもの。
スエードは起毛が緻密ですが、ベロアは起毛が粗く毛足が長い。厳密に言うと、毛足の長い仕上がりをベロアレザー、毛足の短い仕上がりをスエードレザーと呼びます。レザーシャツ、ハンドバッグ、デザート・ブーツやワラビー等に使われている人気革素材です。
ヌバック
銀面をバフしてケバ立たせた革で、スエードと比べると毛足が非常に短くビロード状です。
高級品は子牛皮を原料としますが、成牛皮やその他の動物皮からも作られます。
デザインに応じて使い分けることが出来ますが、ヌバックは皮の厚みを1mm以上に保つことができるので靴のアッパーでよく利用されます。