決して新品の時が最高ではない【ヌメ革の本当の良さは明るい色にアリ】明るい色にこそ革のエイジングの醍醐味が感じられる
【革ee.com】をオープンして今年で10年目を迎えましたが、まだまだ発見の多い日々でもあります。 最近になって改めて思い知らされたのは「ヌメ革っていいなぁ」ということです。
特に気に入っているのがヌメ革の中でも明るい色合いのもので、具体的にはブッテーロのレッド、ブルー、オレンジ、パープル、グリーンです。
ブッテーロはご存知の方も多いと思いますが、イタリアが誇るブランド革です。
10色以上あるカラー展開の中で実に半数以上が明るい色の革です。
水色に近いターコイズブルーや薄ピンクのカラーもあります。
当初はこの明るい色展開に「イタリアの人は明るい色が好きなんだなぁ」と日本人との色彩感覚の違いだと思っていましたが、最近気付いたのは…
エイジングを楽しむためではないか
ということで、実際明るい色のヌメ革の方が何段階にもエイジングを楽しめるのです。
イタリア本革ブッテーロは初めはどの色もマットな感じのつるっとした革ですが、しばらく使うと次第に艶感が増し、もっと使っていくと光沢感が全体を覆うようになります。ここまでは濃い色の革も含めて同じですが、ここからが違ってきます。
1, 明るいカラーのブッテーロのエイジング
光沢感が全体を覆うようになってきたと同時に現れるのは
ワントーン濃くなった深い味わいです。
これが何段階にも続いていくのが明るい色の革の特徴で、やがて深く渋みのある色合いになっていきます。グリーンならダークグリーンに、ブルーならネイビーに。長き時間を経てです。
濃い色の革なら深く渋みのある色合いに変化していくのは、初めから色が濃いので比較的早い時間です。チョコに近いブラウンが濃いダークブラウンに、ネイビーが黒に近くなっていきます。つまり明るい革色は
かなり長い時間、何段階ものエイジングを楽しめる
ということです。
2, 日本人とイタリア人との革文化の違い
日本人は比較的濃い色が好きでイタリア人は明るい色から濃い色まで使いこなす術を知っている人が多い印象です。これは革でも同じでイタリアの人は明るい色の革を楽しむ術を知っているのではないかと思います。
そう思うのは、イタリアが誇るブランド革ブッテーロのカラーの半分以上の色が明るい色であるからです。イタリアを含めヨーロッパではこのような明るい革も人気なのでタンナー(革の作り手)もそういう革を生産するということではないでしょうか。
明るい革色のエイジングを楽しむというのはかなり上級のおしゃれであり、さすがにイタリアの伊達男といわれる理由がわかります。
ヌメ革とクローム革の特徴
上質なヌメ革にはエイジングという楽しみがあって、すべての革に訪れるものではありません。ヌメ革は植物性のタンニンのみでじっくりと時間をかけてなめされた革です。
現在、日本で生産されている95%以上がクローム革といって薬品を使って量産されている革です。
元々はヌメ革だけであった革産業も経済の発展により大量の革が必要になり、時間をかけずに生産できる画期的な生産法を編み出しました。
タンナー(革の作り手)からすれば効率よく生産できる革のほうが儲けは良いわけで、ほとんどのタンナーはクロームにと変貌を遂げました。天然成分のみでなめされているヌメ革は世界上でも生産されている革はわずかでそれゆえに貴重で高価なものです。
エイジングというのは革の経年変化から訪れる現象であって天然成分を使ったヌメ革にのみ現れます。薬品や塗料を使って加工を程しているクローム革には経年変化がなく、新品の時が最高の状態です。
エイジングは革を育てるということ
ヌメ革はエイジングレザーといわれるほどで経年変化を楽しむための革です。
決して新品の時が最高ではありません。
普段は手の脂や日の光などによるエイジング、そしてたまにはお手入れをして保湿力を補いじっくりと育てていく。お手入れをする意味は人と同じで革も乾燥してくるので保湿をしてあげるというのが最大の目的です。
明るい色の革の場合は、最初はよちよち歩きで次第に育っていき、大人になり円熟期を迎えていく。そんなイメージです。何段階にも感じる成長の様子を感じられる愛着のある革。
明るい色の革にはそんなじっくりと革本来の楽しみを感じさせてくれる極上の時間がありそうです。ブッテーロなどの高級ヌメ革は高価なものですが、時間を買うという楽しみもありではないでしょうか。